OGIMOノート~家族のためのモノづくり~

OGIMOテックノート ~家族のためのモノづくり~

重度障害の息子を持つ父親エンジニアの備忘録。自作の電子工作おもちゃ/リハビリ器具/ロボット関係の製作記録、思った事を残していきます

【まとめ】2021年ふりかえり ~家族のためのモノづくり~

2021年もいよいよ終わりを迎えます。

すっかり開発に夢中になって、ブログの記載頻度がすっかり下がってしまいましたが、今年に取組んだ事・開発したモノをざっと整理してみました。

ちなみに、過去2年の製作物まとめは以下です。

【まとめ】2020年ふりかえり ~家族のためのモノづくり~ - OGIMOノート ~家族のためのモノづくり~

【まとめ】2019年ふりかえり ~家族のためのモノづくり~ - OGIMOノート ~家族のためのモノづくり~



★は特に思い入れ深いモノ

今年の活動概要

『息子のため、家族のため、誰かのために、
 自分の技術を生かしたモノを作りたい!』

との想いからスタートした個人モノづくり活動。

家族に向けては、特に息子の小学校生活をサポートする機器を製作してきました。今年のメインとして、歩けない息子の移動支援モビリティ(ToMo-bility)を新規に開発/改良しましたが、それ以外の新規開発は少な目でした。主に昨年に製作して日常的に使ってる開発品(じゃんけんハンド等)を改良・メンテナンス・修理する事に時間を割いていました。

自分の製作品が、
プロト製作フェーズから、日常的に活用できるフェーズに移行
したのだなぁ、と実感を得られた一年でした。


一方で、2021年は
「息子や家族のために作った開発技術を、他の誰かのために活用したい」
というのが大きな変化で、誰かのためにカスタム製作したり、友人と一緒に誰かのために繋がる開発活動への時間が多数を占めていたなぁ、と感じています。

コンテスト

発信活動として、今年初めてチャレンジしました。その結果、大変光栄な事に、以下のコンテストで受賞させて頂きました。

①ヒーローズリーグ [12月]
日本最大級のモノづくり・開発コンテスト「ヒーローズリーグ」
ヒーローズ・リーグ 2021 | ProtoPedia

にて、
後述する「子供用移動支援モビリティ ToMo-bility」を応募・プレゼンさせて頂き、以下の3賞を頂きました。

・MAヒーロー (プレゼン部門優勝)
・CIVITECH賞 (CIVITECH部門優勝)
・ベストドリーマ賞 (個人賞)



②M5Stack Contest [12月]
電子工作業界では知らない人はいないくらい有名になったM5Stackデバイスを活用したモノづくりコンテスト。
M5Stack Japan Creativity Contest 2021 | ProtoPedia
2作品を応募して、2作品とも賞を頂きました。

2位 : M5ポータブルエレベータパネル
意義深い賞 : バーチャル車窓付きM5電車コントローラ





コミュニティ活動

2020年5月~ 分身ロボット・吉藤オリィさんとそこに集まる面白い仲間達と
オンラインコミュニティ「オリィの自由研究部(オリィ部)」
に参加して活動しています。
私は副部長として参加させて頂き、各種プロジェクトや各種オンライン配信(2-4回/月)・モノづくり活動に参加させて頂いております。

community.camp-fire.jp

障害を持った方などの抱える身近な困りごとを解決するアイデア検討/モノづくり/体験イベントをユカイなメンバー達でワイワイと取り組んでおります。この1年は、第二の本業になるくらいに様々な活動を進めつつ、参加されているメンバーの「暖かいリアクション」に支えて頂いています。
(オリィ部プロジェクトに関連したモノのうち、外部公開されているモノを後述の開発リストに記載します)



外部講演・登壇イベント

今年になって、身内コミュニティ以外からも講演や登壇依頼を頂く機会が増えました。特に「趣味×実益×誰かのためモノづくり」に関して、製作物の紹介だけでなく着眼点やそれを使った効果・ノウハウなど踏まえて、90分話せる経験が出来たのも収穫でした。

※もし登壇などのご相談あればDM等で頂ければ、できる限りは対応したいと思います。


・2月 : 兵庫県尼崎市 地域講演会


・2月 /10月 : 福岡エンジニアカフェ「だれかのためのモノづくり」

www.youtube.com



・4月:キッズフェスタ / 東京都理学療法士 小児部










①★ 家族のため ~息子向け成長支援モビリティToMo-bility~

今年のメイン製作品でもあり、私がロボットエンジニアに転職してから一番やりたかった事です。

歩けない息子に自分の意志で自由に動ける体験を作るためのモビリティ開発。

3年の取組みをまとめたものは以下の動画とProtopediaをご覧ください。(ヒーローズリーグ応募作品)
www.youtube.com
protopedia.net


製作&改良活動を通して息子が自分の意志で学校に登校できる様になっただけではなく、移動機器を通して友達が寄ってきて、一緒に遊び始めるという「意志表現&コミュニケーション装置」としての役割をするというのはとても新鮮な発見でした!(日常的に使ってきたからこそ分かった発見)




(1-1) 車椅子ごと乗れる台車モビリティ [6月]

GWの期間を利用して息子のための新しいモビリティベースを製作しました。小学校での手動/電動の切替えのしやすさを考慮して「自分専用の手押し車椅子ごと乗れる電動台車型」として開発しました。
アルミフレームや板金製作にも初チャレンジしてみました。





(1-2) 電車コントローラで動かす台車モビリティ [6月]

電動台車を学校等にもっていく上で、どうやったら学校の友達にも興味持ってもらえるかと考えた際の「電車モビリティ構想」。
プラレールの操縦用に製作したバーチャル窓付きM5電車コントローラでToMo-bilityを操作できる様に改造しました。

今はまだ、走行方向は介助コントローラによる選択だけど、将来的にはROS自律移動と結合させた自動運転にしてみたり、手で書いた線路の上を自動で走る様な機能を付けてみたい。




(1-3) 走行アシスト(自動減速・停止機能) [10月]


(1-1)開発後、10月の運動会や小学校内活用に向けて、急遽導入した機能アップデート。友達の輪の中でも安心して使って貰える事を目指した安全機能。
また、LED表示をうまく使って、本人に「進んだらぶつかるよ」情報を可視化させる教示効果もある事が分かりました!


これも今後の日常生活の様子や課題を見ながら、2022年も改良アップデート予定です。




②家族/誰かのため ~ロボット/モビリティ~

(2-1) ★屋内移動用ROS対応ロボットベースモビリティ [10月]

元々はTomo-bility開発のためのモーター実験用として製作したロボット台車。通学路を含む屋外走行には不向きですが、自宅など屋内では人を乗せて運べるパワーを持つ台車として使えそう!


そして、ROS上で360度Lidar監視による障害物検知・自動減速/停止機能、OriHimeやESP32+Blynkからの遠隔操縦、SLAM(地図作成)、Navigation(自律移動)など基本的な走行実験ができるロボットベースカーとしてどんどん機能アップデートの最中です。

最近だと、Unity連携でロボット走行位置をバーチャル空間上に表示したりも出来る様になりました


アルミフレームなので筐体は拡張しやすいので、例えば 台車の上側を改造して荷物を運べる様にしたり、アームや他の電動機器を付けて遠隔から操縦&操作をさせたりする等、いろんな実験が出来るロボットベースになりそうです!

すでに我が家以外の場所で使って貰える機会を頂き、既に数台製作&提供済、今後も機会が増えそうな予感です。

2022年前半は最も力を入れて、本ロボの機能アップデートに取り組んでいく予定です! ここで研究していった技術をToMo-bilityや他の移動支援機器に展開していきたいですね。




(2-2) ★OriHime×屋外遠隔散歩用モビリティ [11月]

Tomo-bility開発((1)電動台車型)によって、遊休になった大人用電動車椅子を遠隔操縦できる様に追加機能アップデートを加えて、遠く離れた友達が自由に外を散歩できるロボットモビリティを作ってみました!


ToMo-bilityの無線介助コントローラのおかげで、遠隔操縦だと慣れてなくて走るのが苦手な人も介助操作込みで安心して一緒に楽しく遠隔散歩が出来る!

誰かの「できない」をサポートする技術は、少し違う場面でもっと多くの誰かの役に立つ

道路交通法の課題でまだ公道は走れないのですが、この辺りも何か解決策が見つかっていけばと思います




(2-3) ★オリィさん白衣なびかせ機 [11月]

黒い白衣がトレードマークの吉藤オリィさんの白衣をなびかせる事に全振りしたモビリティ。


「(2-1)ロボットベースモビリティ」の展開事例の一つになりました。(オリィさんとわずか2日で共同制作/発表に至った開発品)

こちらも今後改良を続けて、より素晴らしいなびきを目指して頑張ります!



(2-4) コタツ車椅子 [1月]

小学校の教室がコロナ禍対策で常時換気状態になって、冷え性の息子にとっては過酷な状況だったので、車椅子を電気毛布+αでコタツ化してみた! そのままだと低温ヤケドしてしまうので、3Dプリンタ等で固定治具を作って、形が崩れない様にした。

これもこれから冬は毎年恒例で使い続ける事になりそうです!


(2-5) 遠隔宅配受け取りロボットシステム[11月]

福岡エンジニアリングカフェ様主催のイベント「だれかのためのものづくり」にて製作。
分身ロボットOriHimeのパイロット・こやさんの悩み事
「足が不自由で宅配便の受け取りに手間取ってしまう」
を解決するため、ベットから寝たまま、宅配便の荷物をロボット経由で受取り、自分のベット手元まで運んでくる未来のイメージプロトを作ってみました。

www.youtube.com

(2-1)(2-2)などで開発したロボットを組み合わせたイメージ動画ですが、こんな未来の姿を身近に作っていけたらいいですね




③誰かのためのモノづくり

(3-1) ★電車でGoコントローラで遊ぶプラレール [2月]

電車に興味を持ち始めた息子が、自分から主体的におもちゃを遊びにいってくれる事を目指して製作したもの。
M5シリーズを駆使して、電車コントローラにバーチャル車窓を再現!プラレールや電動モビリティを大好きなコントローラで操縦して、楽しみながらリハビリ練習を!

こちらの製作内容については Protopediaに記載しています。
(M5Stackコンテストに応募して、「意義深い賞」を受賞しました)
protopedia.net


また、こちらはキッズフェスタ(4月)で知り合ったお母さんから「我が子にも遊ばせてあげたい」と相談を受けて、その子に向けて山手線仕様でカスタム製作してみました。







(3-2) ★肢体不自由児のための豆まき支援装置 [2月]


肢体不自由で豆を投げれない息子と一緒に節分イベントに参加するため、スイッチ一つで豆を投げる装置を製作。

開発過程の試行錯誤でたくさん豆が当たってすごく痛かった想い出w




(3-3) 肢体不自由児のためのキャッチボール装置プロト [3月]

小学校の休み時間に「友達と一緒にドッチボールに参加できないか?」という学校の先生からの相談で始まった開発。
Amazonで売っている簡易ピッチングマシーンをワンスイッチで発射できる改造を行って実験してみた。

装置を使う事で、子供達が自然に集まってきて、そこでキャッチボールのきっかけが生まれる。
「装置を使う必要があるからこその価値」を実感できました。

これは今年も継続検討中。ドッチボールを投げれる様にしていきたい。


(3-4) 改造くるくるチャイム ver.2 [5月]

昨年に製作した「改造くるくるチャイム」
4月のキッズフェスタで出展していたところ、この製作品を大好きになってくれた子供さんに向けてカスタム製作しました。
CM大好きなお子さんという事で、ボールを転がすと大好きなCM音が鳴る様にしました。





(3-5) ★ポータブルM5エレベータパネル ver.2 [6月]

昨年に製作した入院中のお子さんのために製作した病室内で遊べるポータブルエレベータパネル。こちらをTwitterに投稿していたところ、
「エレベータ好きの我が子にプレゼントしたい」
との相談を頂き、2号機としてカスタム製作しました。

こちらの製作の過程を、Protopediaに記載しました。
(M5Stackコンテストに応募して、「総合2位」を受賞しました)
protopedia.net


また、この内容についてはfabcross様にも紹介頂きました。

fabcross.jp


(3-6) 娘のイラストが具現化!? 猫ちゃん貯金箱[7月]

娘が得意なお絵描き(イラスト描き)。
そんな娘への誕生日プレゼントに、自分の描いたイラストグッズをプレゼント。ちょっと前に
「こんなのが欲しい!」と娘がお絵描きしてたネコちゃん貯金箱を3Dプリンタで立体化、イラスト通りに作ってみた!




(3-7) 木目調LEDディスプレイ[12月]

クリスマスツリーの雰囲気にあう様な電光掲示板(LEDディスプレイ)を製作。

昨年に製作したLEDマトリクスに木目調の透過フィルムを貼っただけだけど、これで一気に雰囲気が変わっていい感じ! 自然とテクノロジーの融合感が素敵!

LEDマトリックスへの入力方法が課題で、子供が簡単に入力できる方法は模索中

ogimotokin.hatenablog.com





④開発活動 ~オリィの自由研究部~

※前述したオンラインコミュニティでの活動のうち、コミュニティ外部へ情報公開しているモノのみ掲載しています。(現時点で未公開の製作プロジェクトにも多数参加中)

(4-1)★オンラインボッチャ装置 (ver.3) [8月]

オリィ部の発明検討会での2020年6月での投稿
「コロナ禍で集まれなくても、家からでも、遠くからでもボッチャを楽しみたい」
という相談から生まれたプロジェクト。
PCやスマホを使ってボッチャランプ(斜面台)の左右上下を操作できる装置をメンバーで開発しました。

今年になってから改良を重ねて、3月には ALL 3Dプリンタ製のコンパクトなオンラインボッチャ装置2号機を、そして8月には公式大会に向けた3号機を製作しました。
3号機に向けては、これまでプレイヤーの皆さんに使って貰った際の課題を踏まえてハード/ソフト共に大幅改良、複数人複数ユニット管理システムも備わったオンラインボッチャシステムをメンバーと製作しました。

これを使って企業スポンサーも入った公式大会も行ったよ。

youtu.be

使っている技術(特にハードウェア)自体はシンプルで、作ろうと思えばDIYレベルの汎用技術で全然作れるモノなのですが、実際に1年間 毎週の様に使い続けてくれたプレイヤーの皆さんのノウハウや改良ポイントがたくさん反映されていて、すごく良いモノになっています。
使い手の方々が一緒に作って育ててきたものなのだ、と実感させて頂いたありがたい取組みです。
本当にメンバーと一緒に作って育ってきたものなのだ、と実感しています。

オンラインボッチャ協会にて、この1年間は毎週活用して貰っています。
来年も毎週定例で使っているので、参加してみたい方は是非ともDM頂ければと思います。

www.sukusukustep.org


(4-2) ★ワンスイッチで演奏できる楽器演奏装置[4-6月]

こちらも2020年6月から取り組んできたプロジェクトの製作。
肢体不自由の子供達と一緒に楽器演奏する体験を作りたい、と、
作るのが好きな人達(通称:武器屋)で実際に装置を製作して、当事者(プレイヤ)に使ってもらう事を行ってきました。


今年は、パーツを基板化してはんだ付けのみで製作できるキット化を実施、20台ほどをメンバーで内部量産、遠隔での楽器セッションをする様な取り組みを行っていきました。

今はまだコミュニティ内部での運用ですが、来年は外部イベントでのお披露目であったり、製作装置に関しても必要な人に広げる活動を進めていく予定です。
興味のある方は是非ともお声がけください!




(4-3) OriHimeからの遠隔シャボン玉装置 [4月]

とあるプロジェクトの中で、OriHimeを使って子供達と遊ぼうとするイベントがあったので、
それに合わせて製作してみました。
OriHimeが手を挙げる事に連動して、シャボン玉を挙げる装置です。


OriHimeの手に連動してスイッチを入れる装置は以下の製作記事を参照ください。
ogimotokin.hatenablog.com










本業でのロボティクス研究開発活動

上記の個人製作活動、仲間とのコミュニティ製作活動も実施しながら、本業側でも子供達の未来に向けたロボティクス技術の開発を行っております。
本年は、私がメインで関わっているプロジェクトのプレス情報はあまりなかったのですが、特にロボット開発&現場実証活動に注力してきました。
また、以下の動画に出演してきましたので紹介させていただきます。

youtu.be






終わりに

いつもの事ながら、製作物の紹介がかなりの長文になってしまいました。

今年は、特にロボット/モビリティに特化した我が子のため、そして「誰かのため」「誰かと一緒に」開発して使って貰う体験を多く重ねる事ができたのは、本当に大きな収穫でした。

一方で、本業の合間を縫っての個人製作活動/コミュニティ活動の中で、自分ができる事の限界を感じる場面も多々ありました。特に使える時間が限られた中(平日の深夜22時以降)で忙しさのピークが重なってしまうと、片方のプロジェクトへ手が回らずアクションが後手に回ったりともどかしい想いをした場面もありました。

本業、個人開発活動、コミュニティ活動、家庭生活、
これらのバランスをどの様にうまく取っていくかが来年の大きな課題になるなぁ、と感じています。



そんな中でも、今年はコンテストに参加して自分を試してみたりなど新しいチャレンジと気づきを得られました。
いつもfacebookTwitter、リアルやオンラインで、様々な暖かいコメントやリアクションを頂けた皆様のおかげだと思っています。

暖かいリアクションは人を育てる。

ワタシや私たち家族もたくさん支えられています!

本当にありがとうございました!
来年もよろしくお願いいたします!