OGIMOノート~家族のためのモノづくり~

OGIMOテックノート ~家族のためのモノづくり~

重度障害の息子を持つ父親エンジニアの備忘録。自作の電子工作おもちゃ/リハビリ器具/ロボット関係の製作記録、思った事を残していきます

歩けない息子の足代替モビリティ開発記①-2 ~手を繋いで一緒に散歩~

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物理的に歩くのが難しく、また知的障害もあり電動機器の操作習得が難しい息子。
そんな息子の「自分で動きたいという意志を引き出す」事を目指した
息子専用のモビリティ(電動車椅子)の開発・練習記録を記しています。


■前回の記事はこちら
ogimotokin.hatenablog.com


2019年8月から取り組み始めたこの個人プロジェクト、
本記事では2020年1月~5月にかけて様々な試行錯誤を繰り返した軌跡を記します。

その結果、少しずつですが、
「自分の意思で進む方向を選び操作に反映する!」
様になりました!

GWには成果報告として、
分身ロボットOriHime経由で実家の母に孫の運転する姿を見て貰いました!

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若干6歳ながら、おばあちゃんと姉の二人を乗せて、颯爽とドライブする息子!
(こんな経験、普通に生活していてもなかなか得られない経験だな、と思います)

自分が作ったモノが
子供の成長を後押しして、
その成長に直結してる事を感じれて、
   
本当にうれしい!

と、大変胸が熱くなりました!
   




以下の記事では、ここに至るまでの試行錯誤のモノづくり&練習の様子を記録として残したいと思います。




取組み④  一人で乗れるための専用シート増設(2020年3月)

前取組み③で実施した「大人用車椅子+1ボタンスイッチを使った移動練習」により、住宅街など自分の身近な屋外環境で練習する事が効果的だなぁ、という感触を受けました!

その一方で、座位大人用車椅子のため息子一人で座る事ができない事が欠点でした。
お母さんの膝に乗せて走行するスタイルによる安心感は、取組みスタートとしては間違いなく効果的だったと思いますが、『「自分の力で動かしてるんだ」という自信・意志を高める』という目的に向けて「自分一人で座れる工夫」事は必須と考え、なんとか出来ないかと試行錯誤しました。

工夫ポイント

どうしてもエンジニア脳な自分は、アルミフレーム等で座面フレームを作る、DIY加工する等の方法を試行錯誤しましたが、、、、

結果として、
【廃棄予定になった息子用椅子の座席を車椅子シートに乗せる&ホームセンタで購入した荷物牽引ヒモで固定】
という最もシンプルな方法を選びました(笑)
     
追加費用1000円というコスパの良さ。
とっさに思いついて試してみたら、、、、ピッタリフィット!
80kg荷重対応紐のため、安定性も問題なし!
なんでも、まずは手を動かしてやってみる事、大事ですね!

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荷物用牽引ヒモで取り外しも簡単なため、折り畳み電動車椅子の特徴を活かして車の荷物入れに全部納められる!
これにより、遠くの公園へ車で向かい電動車椅子の練習も出来るなど、練習する環境の自由度を上げる事ができ、息子に適した練習場所を探す事もできました!

変に難しく考えず、簡単な工夫で出来る事が一番ですね。

取組み成果

さすがに一人で乗る状況だと怖がって泣き出すかなぁ、、、と思っていましたが、初回から何食わぬ顔で乗ってくれました!!!(良い意味で期待を裏切られました) 

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直近3カ月、母の膝を通して車椅子に乗る体験を重ねてきて、「車椅子」が息子にとって自然な位置づけになってきたからこそ、一人でも乗る事を受け入れてくれたんだろうなぁ、と思います。



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最初からこの一人スタイルにしていたら、おそらく泣き叫んで練習にならなかったと思います。

焦らずに、その子が受け入れやすい様に段階を踏む事が大事!




取組み⑤ 「前/左/右」を選択できる息子専用コントローラの開発(2020年3月)

ここまでの取組みのおかげで、『1ボタンスイッチによる前進操作』は出来る様になってきました!
30分近くずっとボタンを押して走り続ける程、慣れてきた様です。
そこで、次のステップとして「自分の意思で進みたい方向を選択する」事を目指し、息子用の方向指示コントローラを製作しました。

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工夫ポイント

コントローラとしてはとにかくシンプルに、余計な追加ボタンを作らず「前」「右」「左」を選択させるだけにしました。
また、言葉の意味もまだ十分伝わらないため、直感的に分かりそうな矢印で表現しました。

筐体は、息子の手のサイズに合わせてCADで設計し、3Dプリンタで製作しました。

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スイッチ部分は以下のマイクロスイッチ(基板実装用)の上に、3Dプリンタ製カバーをはめています。

タクトスイッチ(大)10個セット: パーツ一般 秋月電子通商-電子部品・ネット通販


また、本体ユニットとはスイッチ用GPIO線を3本繋げています。
しかし、物理的に3.5mmジャックのケーブルを3本繋げるのは、運用上面倒くさいので1本のケーブルに束ねました。

ちょうどいい汎用的な4Pinコネクタがないかを調べたところ、【ミニDIN4Pinコネクタ】が入手性も良さそうなので、これを使いました。
(昔のテレビ/レコーダで使われていたS端子コネクタの事です)

ミニDINソケット(メス) 4P (S端子コネクタ) 基板取付用: パーツ一般 秋月電子通商-電子部品・ネット通販
ミニDINコネクタピッチ変換基板: 組立キット 秋月電子通商-電子部品・ネット通販

この二つの部品の組み合わせで基板上にミニDIN4ピンをつなげる事ができます。この4Pinのうち3Pinに「前スイッチ」「右スイッチ」「左スイッチ」を割り当てました。


成果

まずは無邪気に息子にコントローラを渡してみたところ、、、予想通り難しかったです。
ボタンを適当にポチポチ押して予想外の方向に動いてしまった事に拒否感を示し、、、泣き叫ぶ始末。

ですので、ここはもう一度初心に帰り、お父さん or おねえちゃんが座席に座り、息子を抱きかかえる形で操作のお手本を見せてあげる様にしてみました。

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また、最初は「右ボタン」「左ボタン」は使わず、3つのボタンから「前ボタン」を確実に選択してもらう事を意識しました。
『真ん中のボタン(前ボタン)を押すと今までと同じ様に前に進むんだよ!』
変化点を少なくして、受入れハードルを下げる様に取り組みました。

週末3回くらい繰り返したら、コントローラの操作イメージをなんとなく理解できた様で、必ず「真ん中のボタン」を自分で選び、前へ進める様になりました!


取組み⑥ 「してあげる」役割を作る介助者搭乗用ステップ(2020年4月)

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屋外で息子と電動車椅子練習をし始める様になって、改めてお姉ちゃんの存在の大きさを感じました。道路に車が来てないかをチェックしてくれたり、路面の段差状況を見てくれたり、、、
弟から見たら、まさに「介助してもらう存在」

だけど、息子も「ただ介助してもらう」だけでなく、逆にお姉ちゃんに対して出来る役割を作って上げれないかなぁ、と考えました。

そこで、友人から以前に頂いた「子供用バギーステップ」を車椅子後方に荷物固定紐で取り付けて、介助者用の簡易台を付けました。
これにより、お姉ちゃんが歩き疲れた時、弟はお姉ちゃんを車椅子に乗せて運んで「あげる」事ができる!

お姉ちゃんとしては新しい乗り物に乗る感覚で楽しい!

   
「してもらう」から「してあげる」へ
   
そんな立場の逆転

という体験を作ってあげる事ができました!

技術としては超シンプルなステップ台なのですが、この立場の逆転の考え方、結構深くて好きです!
将来的には、これで学校の友達を乗せてあげれる様になって欲しい!

  



取組み⑦ 子供の手を繋げる片手用介助コントローラ開発(2020年5月)


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車椅子練習としていろんな練習コースを模索している中で、困った事が…
息子は大きな車の音が苦手なので、例えば車が近づいてくると怖がってテンション下がってしまいます。
この対策として、手を繋いで気持ちを落ち着かせてあげるのが最も有効です。
しかし、現状の介助コントローラは息子が使う事も想定して大きめに作ってしまったため、両手がふさがっていました。
無理やり片手で操作すると、咄嗟の緊急停止がかけれないため、安全面で不安がでます。
そこで、一緒に手を繋いで安全にお散歩する事を目指して片手のみで操作できる「介助用コンパクト無線コントローラ」を製作しました。

工夫ポイント

子供の手つなぎと安全面の両面を担保させる事を目指しました。

操作感の工夫として、   
・親指ジョイスティックの操作のみで進行の左右方向の補正が出来る
→ 狭い通路でも本人の意志を尊重しながらうまく進む事が出来る
   
ジョイスティック押し込みで緊急停止(子供操作を受け付けなくする)
→ 不意の道路飛び出しを防ぎ、安全を担保
   
これにより、【子供と手を繋ぎながら】路上での走行練習をする事ができ、同時に【安全性も担保】できます!

心理的にも、物理的にも、子供も安心させるコントローラ
  
   

製作システム

簡単なブロック図は以下になります。
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無線通信可能なコンパクトデバイスとして、今回は M5StcikCを選定しました。
(2020/5時点では更にコンパクトなM5Atomが発売されているので、次にもしリメイクするならM5Atomにしようと思います)
M5StickC自体にはバッテリーが内蔵されていますが、電池容量は心もとなく電池切れによる操作ミスを防ぐために、
今回はモバイルバッテリーを外付け前提にしました。

また、ユーザー操作ボタンと介助者コントローラの関係を以下に図示しました。

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介助者コントローラの「後ろ」「緊急停止」はすべてに置いて最優先としています。
操作者コントローラの「前」「左」「右」に対しては、その意志を出来る限り尊重しながら補正する仕様としています。

形状は、3Dプリンタでシンプルなモデリングを作りました。

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成果

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どうやったら、息子は自分の意志で「前に進みたい」と思えるのか?
   
公園は息子が苦手場所だし、そもそもコロナ対策で人の集まる場所には行かない方がよい。かといって、屋内で練習出来るところもないし、本人も楽しくない。
   
という事で、むすこにとって馴染みである近所の通学路周辺(人気のない場所&車の少ない場所)を散歩がてらの練習方法にしました。
将来的には、息子だけの力で通学出来ると事を目指した練習として
   
一番の課題である安全性については、
・最低速度で移動
・万が一、車が来たら早めに停止
・介助コントローラを離さず何かあればすぐに緊急停止をかける

という条件で進めていきました。
   
最初は、怖がって顔を隠しながら前ボタンを押して進む息子。
それだと危ないので、隣に立って手を繋いであげると、、、
   
なんだか安心したのか、、、
目をキラキラさせて前へ進む進む!!
   
片手介助コントローラ、Good Job!
    

『息子と一緒に手を繋いで歩きたい』

という目標が、少しだけ叶った気がします(^-^)
   
   
電動車椅子の練習を始めて、数ヵ月。
最近では、
「進みたい!」
という息子の意志が顕著に見えてきました!

   

明らかに3つあるボタンの「前ボタン」しか押さない!

他のボタンに無理やり手を持っていっても、必ず「前ボタン」に手を戻して押し続けるので、これは明確な意志を感じます。
気がつけば…一時間近く走り続けてます(笑)

そして、最近では、「前に進む」と「前以外の方向に進む」の二択を覚えてきました!
   
ほとんどの場所では必ず「前ボタン」を押し続けるのですが、川辺のコースに行くと必ず「右ボタン」を押し始める!
3回やって3回とも同じ場所でその行動をするので、彼なりにしっかり意志を表現しているのだと、嬉しくなりました!
    
     
もちろんまだまだ課題はたくさん。
息子の意志はしっかり現れてきているが、
まだその意志の詳細を動作に反映させるのは難しい様子。
(例えば、「あっちの道にいきたい」意志はなんとなく表現できても、それを「ハンドル操作をして目的地まで動かす」操作に繋げる事は難しい)

なので、これは根気よく練習しつつ、必要なテクノロジーは試行錯誤でサポートしていきたいと思います!












Extra : 車椅子で遊んでみた ~Nintendo Labバイクコントローラ・電車でGoコントローラ・おもちゃコントローラで遊ぶモビリティ~

息子の「自分の意思で動く練習」のためにレンタルした大人用電動車椅子
空いてる時はお姉ちゃんも遊びたいよね!という事で、
気軽に遊べる様な「遊びゴコロ溢れた電動モビリティ体験」を作ってみました。

Nintendo Laboバイクコントローラ
電車でGo!コントローラ
・Fisherpriceおもちゃコントローラ

の三種類で電動車椅子を遊べました!

実は、過去に製作した「電動モビリティMottoy」での開発システムをそのまま使いまわしただけなので、ほとんど追加開発なしで遊べました!
ogimotokin.hatenablog.com

コントローラは自分の好きなモノで、いろんなモビリティを乗り回せるというのも楽しくていい!

息子はまだ操作認識・練習なので、分かりやすさ優先で「3方向コントローラ」を使っていますが、
本人の習得が進んできた段階で、この様な「遊びゴコロ溢れたコントローラ」で楽しみながら操作できる様にしていきたいと思います!


息子よ、
これから先も楽しい取り組みの可能性、
いっぱい作っていこうな!